労畜の楽書き帳

労畜(https://twitter.com/rebreb01541)の雑記です。

ブラックインターンを避けるために学生が知っておきたいインターンシップと給料のこと

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タダ働きさせられていないだろうか?

誰であろうと、仕事をすればその対価として金などの報酬をもらうのが当然である。また、その仕事が会社などに所属して行う労働ならば、法律で報酬をもらうことが定められている。

ところが昨今、インターンシップやボランティアと称して、人をタダで働かせようとする人々が少なからず目に入る。

とくにインターンシップにおいては、学生が社会や労働法制に無知な点を利用し、使い勝手の良い労働力として悪用する事業所が問題になることも少なくない。

そこで今回は、インターンシップにおいて賃金を貰うべき内容であるにもかかわらず、賃金をもらえずタダ働きさせられる学生が現れないよう、インターンシップと賃金の関係についての事例をまとめた。


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目次

インターンシップと称して無賃労働をさせるブラックインターンに学生は注意

インターンシップだからといって賃金が発生しないなどということは無い」

この点は多くの学生に知っておいて欲しい。

労働者性が認められるような内容であるならば、インターンシップであっても賃金を支払う義務が生じる。

当然ながら、その際は労働者としてみなされるのだから、労災などの適用にもなる。

インターンシップを行う事業者の中には、この点を誤解している人も少なくない。中には、学生の無知につけこみ悪用しようとする事業者も存在する。

事業所側の誤解によって生じたインターンシップトラブルについて、最近の事例でいえば「インターンシップ学生に不払い労働 農業生産法人に勧告 石巻労基署」が挙げられる。

このケースでは、石巻市農業生産法人アルコバレーノファームが、インターンシップと称して、東北学院大経済学部の学生2名に対し以下の仕事をさせた。

・資料やWEBサイトの作成

・イベントでの商品販売など

これに対して報酬が支払われなかったことが問題となったのである。

結果として、石巻労基署が勧告を行い、事業所側が賃金の支払いを進める方向で解決に向かっている。

このように表沙汰になるものやそうならないものも含め、インターンシップの賃金の支払いの有無にまつわる問題は少なくないと見られている。

中には「やりがい」や「貴重な体験ができる」といったようなことを謳うケースもあるほどだ。

しかし、どれだけ素晴らしい体験ができようとも、それが労働とみなされるような内容ならば、支払うべきものは支払わなければならない。その点を履き違えてはいけないのである。

インターンシップでも賃金が支払われなければならない労働者性の基準にはどんなものがあるか

インターンシップだからといって賃金を支払わなくて良いわけではない。では、どのような内容ならば賃金を支払う必要があるのだろうか?

rotic.hatenablog.com

これについては、以前紹介した通り、「インターンシップ受入れにあたって -長野労働局・各労働基準監督署-」が参考になる。ここでは、インターンシップを行った学生に労働者性が認められる内容として以下の内容が記されている。

  • ・見学や体験的な要素が少ない。
  • ・使用者から業務に関わる指揮命令をうけている。
  • ・学生が直接の生産活動に従事し、それによる利益・効果が当該事業所に帰属する。
  • ・学生に対して、実態として何らかの報酬が支払われている。
出典:インターンシップ受入れにあたって -長野労働局・各労働基準監督署-

この目安は、「平成 9・9・18 基発 636 号」「 昭和 57・2・19 基発第 121 号」の内容を踏まえて示されているものである。では、「平成 9・9・18 基発 636 号」「 昭和 57・2・19 基発第 121 号」とは何か?

「一般に、インターンシップにおいての実習が、見学や体験的なものであり使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合には、労働基準法第9条に規定される労働者に該当しないものであるが、直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生の間に使用従属関係が認められる場合には、当該学生は労働者に該当するものと考えられる」とさ れています(旧労働省平成9年9月18日基発第636号)。 出典:インターンシップ活用ガイド活用編 -経済産業省-

まず「平成 9・9・18 基発 636 号」について。この内容から、どのような場合に労働者性が認められるかが読み取ることができるだろう。簡単にまとめると以下の場合に労働者性が認められ得るとしている。

  • 指揮命令を受けており、使用従属関係が認められる
  • 直接生産活動に従事しており、その活動による利益や効果が当該事業場に帰属している。

一方、「 昭和 57・2・19 基発第 121 号」はどういう内容なのか? これは「商船大学及び商船高等学校の実習生の労働者性について」というもので、具体的にどのような場合に労働者性が認められないかを知る手がかりになるものだ。ここでは、具体的に次のような内容について労働者性が認められなかったことが記されている。

  • 大学等の教育課程の一環として、甲種2等機関士等の海技従事者国家試験の受験資格に必要な乗船履歴(一部向上における実習で代替できる)を取得させるために行われていること
  • 実習実施について、大学側から委託事業場に対して所定の教育実習委託費が支払われていること
  • 大学側が工場実習規定等(実習期間や科目、実施体制、履修状況の把握、成績報告、表彰、制裁など)を定め、実習がこれに従って行われていること(但し、具体的な実習内容は、委託事業場に任されていること)
  • 実習が、委託先事業場の従業員で大学側から実習指導を委嘱された指導技師の指導の下で行われていること
  • 現場実習が、一般労働者と明確に区別された場所で行われているか、見学によって行われているが、生産ラインの中で行われている場合であっても軽度の補助的作業に従事するにとどまり、直接生産活動に従事することがないこと
  • まず指導技師によって把握されている実習生の欠勤、遅刻、早退の状況や実習生の履修状況を、工場実習規定などによって定められた所定の手続きによって、最終的に大学側によって把握、管理されていること
  • 実習生に対する制裁が、たとえ実習生の実習規律として委託先事業場の諸規則を準用していたとしても、違反した場合に委託先事業場として制裁を課されないこと
  • 実習手当について、実費補助的なお金か恩給的なお金であること(交通費などについても同様)

つまりここから、あくまで学校教育の一環として行われていると認められる場合、労働者性が認められないことが分かる。

逆をいえば、学校教育の一環として行われていないインターンシップにおいて、先に記した以下の2点。

  • 指揮命令を受けており、使用従属関係が認められる
  • 直接生産活動に従事しており、その活動による利益や効果が当該事業場に帰属している。

このような実態が確認された場合、それはインターンシップであったとしても労働者性が認められる可能性が高くなると思われる。

仮にそのようなインターンシップ最低賃金以上の賃金が支払われていないとすれば、そのインターンシップの適法性に疑義が生じかねない。

この点について、筆者が以前労働基準監督署に確認したところ、「最終的に個別具体的な内容については、本人の申出がないと対応が難しい」とのことだった。

つまり、インターンシップに参加した本人が「おかしい」と感じ、自ら相談に行かなければ、たとえそれが本来賃金をもらうべき内容であっても、泣き寝入りせざるを得ないことになりかねない。

事業所側がそのような違法行為を行わないのが在るべき姿だが、事業所側がコンプライアンス法令遵守)について無頓着であったり、或いは意図的に不法行為を働く可能性は決してゼロでない。

だから、本来的には不要な手間かもしれないが、学生側もインターンシップをするのであれば、事前に「インターンシップだからといって賃金が支払われなくて良いなどということはあり得ない」ことを知っておくべきだろう。

また、どのような内容について労働者性が認められるのか意識しておくに越したことはない。

学生生活という限りある時間を、コンプライアンスの機能していない事業所に付き合い、無為に過ごすことがあってはならない。また、労働したならば、しっかりと対価を受け取る必要がある。それが社会のルールなのだ。 

有償インターンシップという選択肢もある

インターンシップだからといって賃金が支払われなくて良いわけではない」と分かったとしても、学生が個々で労働者性の有無を判断するのは極めて難しいだろう。

手っ取り早い対処方法としては、自分が参加したインターンシップの内容を記録し、終了後に労働基準監督署などに相談する方法が挙げられる。

しかしそれこそ手間だという学生は少なくないはずだ。

そういった学生については、やはり最初から賃金や報酬を支払うことを明示しているインターンシップを受けるのが得策である。

そもそも、今は有償インターンシップがゼロではない。あえて無償インターンシップなどやる必要はないとさえいえる。

いっそアルバイトでもした方が良いかもしれない。 無償インターンシップの全てがタダ働きさせる意図があるとは言わない。

素晴らしいインターンシップも少なくないは一定の事実である。しかし、せっかく現実の仕事に触れるのであれば、やはり報酬があった方がやりがいや責任を感じ、より濃密な体験ができる学生は多いだろう。

有償インターンシップとしては、たとえばLINE株式会社が1ヶ月40万円のインターンシップを募集したことで話題になった。

またヘッドハンティングなど人材ソリューション・アウトソーシング業務を行っているジーニアス株式会社も時給1000円の短時間インターンシップを募集していたことがある。

日本最大級の就活サイト「リクナビ」の掲載企業を調べると、インターシップを募集している企業数が約5,500社。そのうち報酬ありのインターンシップが約250社。なんと報酬ありのインターンシップは全体の5%ほど。 出典:インターンシップの報酬・給料は平均いくら貰える? -ゼロワンマガジン-

これまで無償インターンシップが主流であり、その流れ自体はまだ大きく転換したとはいえない。しかし、ここに書かれているように有償インターンシップも決して少なくないのである。

むしろ5%もあるのかと思う人も少なくないかもしれない。 インターンシップは、数多くの職場をその目で確認し、就活などに大いに役立てられる貴重な機会だ。

しかし悲しいかな、世の中にはそういった機会を求める学生を、「やりがい」や「貴重な体験ができる」といった甘言で唆し、安い労働力として使おうと考える事業所も多い。

学生たちの貴重な時間が大人の都合で無駄に消費させられない健全なインターンシップ環境が整うこと、学生たちがより高い価値のあるインターンシップが受けられる健全な社会になることを願ってやまない。

ブラックインターンなど、あってはならないのである。

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